今回も、数年前の受講生からご紹介。昨年約一年半の米国留学を終えて帰国、今は大学院卒業そして就職に向けて準備中。
人生を目的に向かって意識的に積み上げてきたタイプかと思いきや、お目覚めは案外ゆっくりだったようで…[Text 西岡妙子]
始めるのに遅いということはない
現在、大学院2年生。今年9月に卒業し、10月にエンジニアとして就職予定です。
工学部で土木を専攻していましたが、その中で、自分の関心はどんどんビジネス、経営学の方に向かっていました。というのも、何かものを作るときには、技術経営や戦略の視点も欠かせない。中でも、ビジネスモデルに興味が湧いてきました。
それで、学部3年の終わりに、友人とビジコンに出たんです。いくつか出場した中のひとつで優勝し、賞金をもらって、そのビジネスアイデアを実現する機会があったんですけど、結局起業はしなかったんですね。自信がなかったんです。今思えば、極端に。
ビジネスのプランを「考えること」と「やること」っていうのは、全く違う種類のスキルなんだと痛感しました。
でもこの経験は、将来を考えるきっかけになりました。というのも、それまで僕は、全く深く考えずに、そこまで来ていたんです。「なりたい自分像」も考えたことがなかった。「今の自分」と理想との差が大きすぎて、とにかく不安で、答えが出なかった。答えが出ないから、考えなかった。
院に進学するのか、起業するのか、就職するのか……何がしたいのか、できるのか。考えてみたところで、これまでの生活とあまりにも乖離していて、現実味がなく、違和感があったんです。それで、武者修行に参加することにしました。
そこで前ちゃんに出会いました。前ちゃんは「院なんて行ったってしょうがない」という立場でしたが(笑)、結局僕は留学するために院に進学することにしました。
武者修行から帰ってきても自信の無さは解消できなかったのですが、大学院に行って留学しよう、と決めて、大学4年は旅武者インターンの全国統括と、留学準備、院への進学準備と忙しく過ごしました(もちろん卒業論文も(笑)
)。
そして、IBPプログラムと、文科省の「トビタテ!留学JAPAN」という2本の奨学金を得て、シアトルに9か月、そのあとニューヨークに半年留学しました。
シアトルではグローバル・ビジネスを専攻。留学してすぐ感じたのは、「自分の無価値さ」でした。
日本では、例えば旅武者インターンで100人をまとめるリーダーをやり、コーチングや研修の立案や運営をしたりしていましたが、アメリカのマーケットでは何もできないことを思い知ります。コーチングやワークショップ、マーケティングをアメリカでやろうって、それは英語喋れなかったら意味ないんですよね(笑)。 日本人を雇う理由ってないじゃないですか。
まずは、言葉の壁を乗り越えなければいけない。英語にはもともと苦手意識があったのですが、日本語を徹底的に排除し、日本人にも会わないようにして、今では「帰国子女?」と言われるレベルになりました。
それから、何か人とは差別化されたスキル、知識が必要だ、と考え、ブロックチェーンについて、大学の授業が終わった放課後に独学で勉強しました。
その留学プログラムには就労ビザの発行も含まれていて、現地で仕事ができる大きなチャンスでした。ただ、そのインターン先は、自分で探さないといけない。それで、ありとあらゆるツテをたどって、ニューヨークのブロックチェーン関連企業でインターンとして就職できたんです。就職面接では、その会社のマーケティングプランをパワポで作って持って行き、プレゼンをしました。そして仮想通貨取引所のマーケッターとして働く機会を得ました。
この経験から、「始めるのに遅いということはない」と実感しました。そして、「やりたいことに素直になる」ことがとても大事。そして、「地に足付けて、自分に力を付けていかないと、価値はついてこない」ということを学びました。
「自分は何ができるのか」と「それが必要とされている価値なのか」という問いの大切さを実感したので、日本に帰ってから未経験だった「エンジニア」としてインターンをさせてもらっています。
また、今友人とサービス開発していて、2月にベータ版をリリース予定。コンテンツは、ブロックチェーン関係です。
今の自分の課題は、「最後までやりきる」こと。成功とか失敗とか関係なく、やりきることが大切だと感じています。途中で辞めたら、全部無駄になっちゃうんですよね。自分がどう貢献したのか、成長したのか、何も分からない。そして結局「何してきたんだっけ?」
なってしまう。
だから、プロジェクトにかかわる機会はたくさんありますが、何でもかんでも引き受けていくのではなく、「やりきれるもの」を選んでいくようにしています。
そして、引き受けた仕事の成功確率を上げていきたい。いろいろやれば、当たる確率は上がっては行きますが、自分で意図して上げていくことを意識しています。そうしないと結局、自分の価値が高まっていかないんです。
アメリカではすぐに「何ができる?」「何が得意?」「何をやりたい?」と聞かれたし、即答できなければいけなかった。
僕は今、自分のエンジニアスキルが不足していると思っているので、仕事を通じて経験を積んでいます。ビジネスのリーダーはエンジニアの知識は必要ないといわれることもありますが、コードなど技術面がある程度分かっていれば、いずれリーダーになったときにエンジニアとコミュニケーションができるし、アイデアも湧いてくる。必要ないと言われているけれど、分かってる方が絶対強いですよね。
帰国して改めて感じたことは、日本の社会は、国籍や民族、性別、宗教など、違うものに対しての文化理解がまだまだだなということです。自分と違うもの、多数派でないものを排除するような空気がありますよね。
また、日本人の宗教観について、生活習慣としての儀礼はありながらも、大多数の人が無宗教ですよね。アメリカでキリスト教コミュニティーに関わって実感したのですが、宗教は、幸せに生きるための哲学、教育が体系化されたもの、という側面があると思うんです。宗教的なものが日常から排除されているせいで、生きるということ、心のこと、哲学的思想に触れる機会が少ない社会なのかなと思います。
小さい頃は遊ぶのが大好きで、木登りしたり、秘密基地を作ったり……
小さい頃は、科学館や未来技術館に行くのが大好きで、ノーベル賞を取る!と言っていたそうです。ノーベル賞が何なのか、分かってもいない年の頃の話ですが(笑)。
サッカー、バスケ、なんでもやってました。遊ぶのが大好きで、木登りしたり、秘密基地を作ったり。今はもうだいぶ住宅開発されてしまいましたが、僕が子どもの頃は、まだ畑がたくさんあって。5時まで木に登って遊んで、それから中学受験の塾に行って……勉強も好きでした。
中高時代は、アイドルオタクをやっていました。AKBから、名前を言っても分からないような地下アイドルまで(笑)。親からもらう小遣いだけではオタ活には足りないので、ペンライトを改造してオタ活資金を生んでいました(笑)。何十万と儲けましたね。受験期に入り、足を洗いました(笑)。
今の趣味は、料理です。大学から家が近いので、今日のお昼もネギ塩豚カルビ丼を作って食べてきました(笑)。今婚約中のパートナーがとても料理上手なので、いろいろ教えてもらっています。
パートナーとは、友人の鍋パーティーで知り合いました。これから家庭を築いていくのが楽しみです。でも育児って、自分の時間が無くなるし、「思い通りにならなくてもしょうがない」と諦めるだけの、心のゆとりが必要ですよね。……今の自分には、正直ハードル高いな、と思うところもあります(笑)。
でも、自分なりに考えている子育てメソッドがあって、それを試してみたい気持ちもあって。小さいころ、特に3歳までに、何かに熱中する、興味を持つ、「なぜ?」を考える素地を作る、というものなんですけど。小さいころにその素地ができれば、後はどうにかなるんじゃないかなと思っていて。だから、何でも買い与えるのではなく、「うちは貧乏だ」といって育てようと思ってるんですよ。何もなければ、作るしかないから、考えるようになるんじゃないかな。
甥っ子がちょうどそのくらいなので、彼を見ながら勉強しています(笑)。
企業を自分なりに見るのが楽しめるようになった
前田塾のことは、武者修行で知りました。前田塾というコミュニティと、得たい知識を扱っていたので、流れで迷いなく参加しました。選抜コースの22期生になります。
講義だけでなく、同じ期の友人と「企業分析勉強会」なるものを作って、毎週どこかの企業の財務諸表をケーススタディするということをやっていました。そこから企業を自分なりに見るのが楽しめるようになりました。
そのころ得た知識は、そのあとになって、いろいろな場面で登場してきました。自分の研究の過程や、アメリカ留学中の会計の授業、そして社会人と話をするときなどに、前田塾で学んだことが出てきます。ニューヨークでは、Fintechの勉強会で、金融機関にお勤めの方々に講義をしたこともあります。いろんな局面で物事の裏に走っているビジネスロジックに付いていける基礎が得られました。
前ちゃんは、推進力がめっちゃある人だなと思います。次々と新しいことをやる、そのスピードが速い。
あと、ちゃんとしているときと、してないときの差がすごい(笑)。バツイチ感、ありますよね(笑)。常人が付いていけるスピードじゃないですから。
「今は何の知識もないけれど社会人とちゃんと議論できる力を付けたい」と思っている人は、前田塾で学べば、期待通りのものが得られると思いますよ。学生感覚のまま、仲良く過ごせればいいという人には不要でしょうけど、社会人のネットワークからいろいろ吸収してやろうと思っているのなら、前田塾がオススメです。
※編集部注
「選抜コース」は現在、ビジネスの基礎素養を学ぶ「合宿」、ビジネスシーンの最先端を行く講師による「トップキャリアコース」として開催されています。
このインタビューで、さまざまな二十代の若者たちに会いました。
次々と世間から与えられる課題を、頭を悩ますこともなく難なくこなしてしまうほど「優秀」であるが故に、「何も考えて来なかった…」とある日ふと立ち止まることが、宿命的にあるようですね。
でも後藤さんは、そこから組み立て直し、「始めるのに遅いということはない」というシンプルで力強い結論にたどり着きました。励まされた読者も多いのではないでしょうか。
いつまでもくよくよせずに、今からできる次の手を考える。子どものような素直さの源泉は、あの頃の木登りや秘密基地から繋がっています。