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第17回 鶴野 直子 さん(U30トップキャリアコース 1期生)

U30トップキャリアコースの女性の参加者は全体の2割。

日本のキャリア問題を反映しているかのような数字ですが、前田塾では、性別も年齢も、学歴も所属も関係なく、属性から解放されて「本人」だけで勝負。

子どもの頃のように全く対等に、楽しく共に学び、知性を磨きます。

今回は、大手外資系コンサルから国内メーカーに転職、管理職就任という異例のキャリアの鶴野直子さんをご紹介します。

このままじゃいけない、新しいことに挑戦したい 

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2014年に新卒で就職したグローバル戦略コンサル企業から転職して、現在は日本の工具メーカーに勤めています。

大学に入る前は、国家公務員になりたいと考えていたのですが、兄が実際公務員として勤務している姿を見ていて、キャリアアップの手堅いルートがあるようなので「私には合わないかな、途中でドロップアウトしそうだな」と思うようになりました。

一つの組織の中でキャリアを積んでいくイメージが自分の中になくて、組織を変えながら生きていく方が性に合ってるかな、と。

それで、コンサルを志望して就職活動しました。もともと課題解決を考えるのが好きなので、仕組みを変えたり、新しい仕組みを作ったりということに興味がありました。前職の戦略コンサルは、面接官とのフィット感もばっちりで、就職試験がすごくおもしろくて、勉強になったんです。試験後、すがすがしい疲れの中で、「落ちても満足だな」と思いました。

結局内定をいただいて、即決しました。社風が合っていたんですね。

そしてコンサルタントとしてクライアントに関わっている中で、自社の商品を我が子のように愛しているクライアントさんの姿を見て、やっぱり私も事業会社で働いてみたいと思うようになりました。サービス系やITではなく、物理的なモノづくりに関わってみたかった。そして、一般消費者、つまり市井の人々を対象にしたBtoCビジネスが好きなんです。

プロジェクトベースで動く前職から事業会社に移ると、スピード感が物足りなく感じることがよくあるそうですが、現業はファンドが入っていることもあり、スピードは十分維持されていると感じます。

実は、私が転職してすぐは、動きがゆったりしていて内心焦っていたのですが、ファンドが入ってから会社のトップ層がガラッと変わり、改革がどんどん進んできました。

特に2019年はCEOが変わり、「こんなに変わるとは!」と思うほどの変革がありました。意志あるトップ層の責任感と役割の重要さを目の当たりにして、将来は私も改革ができる層になっていきたいと考えています。もちろん手を動かす現場ももちろん必要ですが、彼らにこれからどこに行こうとしてるのかを伝え、納得してもらいながら、改革を進めていきたい。

現在、企画戦略を担当していて、営業戦略やチャネル戦略を立案しています。需要や売上、在庫管理、生産を平準化するためのルート戦略を検討したり、何をどこにいくつセールスするのかを考えたり、ビジネスの数字を日々作っていることを実感しています。

課長になったので、年上の部下の方もいます。プロパーの社員さんに対しては、ついつい遠慮してしまいそうになりますが、それはかえってよくない、と踏ん張っています。すごく鍛えられますね。商品知識はプロパーの方のほうがあるので、現場の方の声を聴きながら、新しい経営層が目指す世界と現場からのリアルな声をつないでいけたらと思っています。
中途入社組の私は、プロパー社員さんががっかりされないように、「この会社をよくするために来たんだよね?」という期待に応えていきたいと思っています。「中途で来た人」と思われて、終わってしまわないように。会社になじんで終わり、というのは嫌なんです。「なじみたい」と思ったら辞め時かも知れません(笑)

プロジェクトベースで常に全力疾走だった前職では、とにかくロジカルであることが求められていました。決して苦手な分野ではなかったのですが、自分でそれが強みだとわかっていなかった。

自分に自信が持てなくて、高評価をいただいても「女性だから甘くされたかな?」などとなんとなく素直になれなくて、自己嫌悪や否定感が強かったのですが、今はそう思ってしまったとしても、「それも含めて私」と思えるようになりました。できないところばかりが目について、完璧主義だったんです。

自分のペースで、自分のやっていることをひとつひとつ認められる、今の自分の方がいいな、と自分でも思います。年齢とともに成長した部分もあると思います。

現職で、日本全国の営業所を回っていて、都会と地方に差があることに気づきました。経済というよりも、ビジネスの知識や技術、環境の格差ですね。地方の中小企業には、能力があって勤勉でも、環境のせいで限界があり、どうにもならなくて苦労している人がいます。そういう人々が、正当に報われるべきだと思っています。

問題が解けたときのスッキリ感がすごく嬉しい

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さいころは、とにかく負けず嫌いな子どもで、男子と喧嘩ばかりしてました(笑)感情が激しくて、よく泣いてよく笑ってよく怒って。悔しくて泣いちゃうこともしょっちゅう……それは今でもかな(笑)。

負けず嫌いな半面、負けそうなものにははじめから取り掛かれない、臆病な部分もあって。「挑戦してダメなこともある、合わないだけ。勝ち負けじゃない」とだんだんと思えるようになったのですが。

ずっとピアノを習っていて、小学校で金管バンドでトランペット。中高は私立の女子高で、オーケストラでビオラを弾いていました。メロディーラインじゃなくて、伴奏をやってみたかったんです。オケはその後、大学でも続けました。中高では部長、大学では団体責任者に就き、みんなが居やすい場づくりを考えるのが好きでした。今も市民オケで弾いています。

好きな曲は、ベルリオーズの「幻想交響曲」、チャイコフスキーの「冬の日の幻想」や「小ロシア」。「小ロシア」は、先輩たちの演奏で、人生で初めて聞いたシンフォニーです。それからドボルザークの7番、8番も。これは高1、高2で弾いた曲。どの曲も、青春と結びついて、忘れがたいですね。

小学生のころから国語が得意で、どちらかというと算数が苦手。本を読むのは今でも好きで、今は勉強もかねて需要予測の本を読んだりもしていますが、小説もよく読みます。

小野不由美の「十二国記」シリーズの新刊は、出て2日で読み切りました。ファンタジーの中に、生きる上での大事な要素……信頼や、裏切りなど、日ごろに置きかけられる問いかけがたくさん含まれている、すごい作品だと思います。小学生のころよく読んでいたのは吉本ばななの「TSUGUMI」。生と死、どう生きるかを考えさせられ、学生のころは毎年1~2回、読み返していました。

ちょっと前までは「脱出ゲーム」にはまって、100回以上参加しました。成績をエクセルで管理するほどはまってました(笑)。トップキャリアコースの仲間と参加したこともあって、それがたまたまテレビに取材されたんですよ(笑)。何回も参加していると、パターンが読めてきそうに思えるのですが、やはり一筋縄ではいかない。ひらめきが必要なんです。考えるのが好きなんですよね。問題が解けたときのスッキリ感が、すごく嬉しいんです。

社会人になってから、美術に興味が出てきて、西洋と日本の美術史を勉強しています。何も知らずに、自分の感性だけで美術鑑賞するのもいいものですが、背景や流れを把握してから見ると、より深く味わうことができます。美術作品も経営課題の解き方も、時代によって評価されるか否かが変わる。時代の寵児として光が当てられていた人が、社会情勢の変化によって一転、影となることもありますよね。アートとコンサルは、似ていると思います。

小学生の時には良妻賢母を夢見ていましたが、結婚や出産については、今はまったく意識していません。というのも、私は考えるとそれに縛られてしまうタイプなので、あえて考えないようにしているんです。生物的な出産リミットはあるものの、生涯仕事は続けていきたいので、その時々の状況や人との出会いで、考えていきたいと思っています。

「大多数の生き方から外れても、人と人と違うなら違ったとしても、わたしには価値があると思えればいいじゃないか」と、考えられるようになったのは、私なりの成長だと思います。

とりあえずサバイブしていける

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トップキャリアコースのことは、前ちゃんのFacebookフィードを見て知りました。学生時代に、前ちゃんのホームパーティーで知り合っていたのですが、その時には「ただの飲んだくれ」と思ってました(笑)

職業や職種の違う人、価値観の違う人に出会いたいと思っていたんです。これまでの経験から、「環境は人を作る。それは大人になっても同じだ」と考えていました。職場環境の違う人の思考に触れてみたかった。

私はもともと、自己肯定感が低くて、根暗で引きこもり系なんです(笑)。一人でいくらでも過ごすことができます。だから、外に出ることを敢えて意識していないと、家にこもっちゃう。ただ、これまでも「意識して頑張って外に出て、結果良かった」ということが多かったのも事実です。なので、トップキャリアの参加についても、自分で自分で刺激を与えるという意味もありました。

「目の前の気になることをとにかくやってみよう」と思っていたので、自己投資は惜しみたくなくて、すぐに申し込みました。

参加して、関心分野が広がったし、期待した通り、本当にいろんな人に出会えました。思考の違いは言葉の選び方一つ一つに出てきていて、毎回議論したり話を聞いたりするのに飽きなかったです。例えば、公務員として働いていたある人は、「日本人として~」と話始めたりするのですが、私はそんなことを考えたこともなかったから。

今、自分の状況に「これでいいのかな?」と疑問がある人、自分で自分が何をどう考えているのかを知りたい、自分を客観視し、相対化したい人は、ぜひ参加したらいいと思います。同世代の異業種がこんなに集まることは、他にはないですから。転職を考えている方にもお勧めします。会社でなければ学べないこともあるけれど、会社の外でなければ学べないこともあります。

前ちゃんは、やっぱり「よく飲んでるな~」と思います(笑)そして、「自分が楽しいことをやろう」ということがちゃんとできている大人だな、と思います。大人になると、「こうしなければ」が増えてきて、私はそれが窮屈で苦しくなるタイプなのですが、前ちゃんは自由にいろいろ楽しんでる。「それもいいのかな」と思わせてくれる、良い見本です。

トップキャリアコースで、いろいろと戦う力が身に付きました。とりあえずサバイブしていけるんじゃないかな、と思っています。 

maedajukutop.biz

 

 

20代で年上の部下がいる管理職。

一見順風満帆の超人ですが、「まだ足りないのでは?」と不安を感じたり、「過大評価されている」と感じてしまったり……「私はわたし」にたどり着くまでには、苦悩のときがあった鶴野さん。

「成長したんですよ。まだまだ、ですけど」と、笑顔で語ってくれました。

「考えて考えて、解けてスッキリするのが好き!」という彼女の性格が、とことん自分に向き合う力になり、そのまま仕事、そしてキャリア形成に生きていますね。

仕事の話はもちろん、趣味のクラシックや脱出ゲームにいたるまで、彼女独自のアンテナにかかったものについての話題も広がり、興味深い話が尽きないインタビューでした。