前田塾秋合宿に参加し、新年からトップキャリアコースを受講予定の中西一貴さんは、医学部の3年生。
武者修行、そして前田塾で、大きく変化したことを語ってくださいました。
「どんな世界が見たいか」という観点から、キャリアを考える
現在、医学部の3年生です。これまで医学の初歩の初歩ともいえる原理を学んできて、これから臨床医学に入ります。
父が医者なので、小さいころからなんとなく、大人になったら医療関係に、と思っていました。憧れというほどのものでもなくて、なぜか普通そういうものなんだと思っていたんですよね。
同時に、医者になって一人一人の患者さんに関わるよりは、大きな影響のあることをやりたいという思いもありました。高校生のころに「医系技官」という職業を知り、それならば医療の世界で自分の働きかけが大きく響くような、そんな仕事ができると思い、目指すようになりました。それがわざわざ東京に来た理由でもあります。
でも大学に入学して勉強して、いろんな活動に関わってくるうちに、また将来の展望が変わってきて、今は、「自分が何をしたいか、どうなりたいか」ということよりも「どんな世界が見たいか」という観点から、キャリアを考えるようになったのです。
学部で「食生活」に関する栄養学の研究に触れて、その研究がまだまだ発展途上であることに気づきました。今、病気で病院にかかったときに、投薬や運動をすすめることはあっても、食事指導ってあまり強くはされないですよね。それってまだざっくりと「この食事は健康的だ」と言うことはわかっていても、例えば「こう言う状況の時は特にこの栄養素の摂取に気をつけなければいけない」といったことが厳密にはわかっていない、という現状があると思うんです。
そして、栄養学はただ研究をすれば良いというものでもなく、伝えて、実践してもらわないと意味がない。
高騰し続ける日本の医療費の中で、2大巨頭と言われるのが糖尿病と骨粗しょう症です。いずれも、食事がとても重要なファクターであり、食事に気を付けていれば未病の段階で防げる可能性が高いものです。引いては、医療費の削減にも貢献できますよね。
……ということを誰もが頭では知っていながらも、なかなか行動にはつながらない。医者が食事についてのアドバイスをしても、患者さん自身に実感がなければ、行動はしない。逆に言えば、それが分かれば、行動変容につながると思うんです。
最新の精度の高い情報がもっと共有され、実際の行動に移されるように、進歩し続けるデジタル技術が生み出す、新しい社会に関わることをイメージしています。
学業面ではその目標に向けて、キャリアにつなげて行きたいと考えています。
他にもいろいろやる中で、なんだかあわただしくて……毎日の整ったリズムを作ることが、今の自分の課題ですかね(笑)。
ひとつは、大学受験塾での講師業。化学を教えています。高3担当なので、結果に繋げなければいけないから、絶対手を抜けなくて、生徒との真剣勝負。なかなか責任重大です。でもそんな生徒から自分がもらうものも少なくなく、とてもやりがいを感じています。
もう一つは、「知るカフェ」というカフェの店員。ちょっと変わったカフェで、学生が主体となって運営を行っています。普通のカフェ店員の様にホールスタッフもしますが、お店のシステム作りや経営のお手伝いなど運営業務も担当しています。
それから、旅武者の営業インターン。旅武者で人生が変わったという人はたくさんいるけれど、僕もその一人です。大げさに言うならば、それまでの僕は殻に閉じこもっていて……全部、何でも、一人でやろうと思っていた。周りにそういわれていたわけでもないのに、「自分でできなきゃだめだ」と思い込んでいたし、できないことも認めたくなかった。それを壊してくれたのは武者修行、そして前田塾なんです。
ずっと一人だった
僕自身、小さいころから、「ずっと一人だった」という印象があります。いじめられてた、ということではないのですが、そういう気持ちだったことが思い出されます。
漫画を読むのが好きで、特に好きなのはあだち充作品。テレビで見た『クロスゲーム』をきっかけに、有名どころはほぼ全作読んでますね。主人公が努力して強くなって、結果が結びついて行くというストレートなストーリーはもちろん、時間があったら喫茶店に行ってのんびりするような、昭和ののどかな日常の雰囲気がいいなあと思います(笑)。キャラクターの間に少しずつ関係性が育っていく群像劇が丁寧に描かれていることも魅力です。
中高はとにかく自由な学校でした。僕は、生徒会や文化祭など、イベントに関わっていました。学校から1千万の予算を預かって、それを各部活に振り分ける予算委員会という活動では、各部との丁々発止の折衝が面白かったです。
大学では「競技かるた」の同好会に入り、真剣に挑戦しました。医学部だけの部活では交友関係が狭くなるので、全学部のサークルがいいなと思っていたので。秋からの参加だったのに温かく受け入れてくれた皆には今でも感謝しています。大会で日本全国を回り、A級が取れたので引退しましたが、今でも「趣味・特技」と言われれば、「カルタ」。
「玉の緒よ」という札が好きですね。これは「決して明るみに出してはいけない想いだけれども、これ以上生きていたら表に出てしまうのでもう生きていられない」という激情の句で、何か共感できるものがあります。
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることのよわりもぞする
ただ、そんなことは試合中は考えないですね。何なら強い人ほどあんまり意識してない印象があります(笑)。試合中はシンプルな音の聴きやすさみたいなことしか頭にありません。それでいうなら、「ゆふされば」の札が好きです。A級に上がった大会の最後の一枚も「ゆふされば」でした。
夕されば門田の稲葉おとづれて 芦のまろやに秋風ぞ吹く
大納言経信(71番)『金葉集』秋・183
他には、ジム通いが、心身ともに良いリフレッシュになります。数字として記録できるものが好きなんですよ。データで出るから、目に見えて変化が分かる。それがやりがいになります。データとか数字とか、結局好きなんですよね(笑)。
最近は読書も好きで、最近良かった本は孫正義の「志高く」。ビジネス書や実用書をよく読みます。でも、本棚の一番上は、あだち充コレクションです!(笑) バイトするようになってから大人買いして、ほぼコンプリートしています。
このインタビューの「結婚や育児について」という質問事項を見て……思わず目を背けてしまいました(笑)。うーん、ほんとに、難問ですよね。30までに結婚はしたいと思っているんです。でも、子育てができるかどうか。パートナーに丸投げする気はなくて、だからこそ、自分のキャリアプランとの兼ね合いが本当に難しい……。
ちょっとだけ考えて、とりあえず料理はできるようになろうと、ABCクッキングに通ったんですけどね。30回通って、簡単なものなら一通り作れるようになったんですよ……って、問題はそこじゃないんですよね(笑)。でも、とりあえず(笑)。
まだまだ道の途中だけど、人間としてようやくここまでこれた
前田塾のことは、FBの友達の投稿で知っていました。その友人は幼馴染で、小4の時に彼が転校してそのまま疎遠になっていたのですが、大学生になってからまた出会って、そしたら彼が武者修行・前田塾と参加していたんです。彼がとにかくほめちぎっていたので、武者修行と秋合宿に参加申し込みをしました。
申し込み時点では、知らない領域の学問に出会えることは期待していたけれど、チームで学ぶという手法には、まったく興味がなかったんです。
前ちゃんの第一印象は、「エラいちゃらんぽらんで、ユルい人だな」(笑)。でも、そのあとの講義の時には、「クソみたいな議論しやがって!」って怒られて、「言葉遣いワル!」って思って(笑)。でも、その時は真剣な姿勢の、普段とのギャップに驚きました。
合宿でもそうなのですが、一人一人がどういう状況なのか、どういう段階でどういう性格か、ちゃんと見てくれている人です。一人一人に成長や変化がもたらされるように、働きかけてくれて、そして、チームで取り組むということの意義を教えてくれました。
武者修行を終えて前田塾合宿に参加する時には、チームの力を知っていたので、それをもっと深めたいという意識になっていました。そして、仲間を信頼し、「わからない」を言いあえて、かつてないくらいいいチームワークができ、とても充実した体験だったと思います。
以前の僕がまさにそうだったのですが、「自分は一人で何でもできる」と思っている人に、ぜひ前田塾でのチームワークの体験をしてもらいたい。個人のスペックが高いならなおさら、誰かと組んで、チームで学ぶとすごい力になるんです。……でも、個人でわりと何でもできる人ほど、「チームの力」という言葉が響かないんですよねえ~(笑)。学部の友達にも勧めているけれど、「いや、独学の方が早いから」みたいな感じで……。教わらずにできることに価値があると思ってる、というのもあるのかな……。
武者修行や前田塾に出会う前の僕は、「もっと立派な人間に」という思いはあったけれど、それは独力でかなえられる、と思っていたんです。そんな僕に、周囲の、例えばカフェのメンバーが、輪に入れようと手を差し伸べてくれていた。でも僕は、彼らの気づかいや優しさにも、気づかずにいて、あまり大事にしていなかったんです。
ビジネスを学ぼうと思って参加した武者修行と前田塾で、人との関わり方を教えてもらって、そのことに気付けて、そして周りへの感謝が少しはできるようになりました。昔は、「周りに感謝しなさい」とか言われても、「よくある話」や「きれいごと」くらいにしか思っていなかったけれど、少しずつそれがわかるようになって来たかな、と。まだまだ道の途中だけど、人間としてようやくここまでこれた、という思いです。
医学部というのは、専門性が高い分、閉鎖したコミュニティーになりがち。ここに来て、まだまだ知らないことが無限にあることを知った。だから、今はまだ、意識して積極的に、知らないところに足を踏み入れて、もっといろんなところに行きたいと思っています。来年から、トップキャリアコース3期に参加します。どんな仲間に出会えるか、今からとても楽しみにしています。
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「ずっと一人だ」という内面を抱えながら、あだち充の描く日常の風景に惹かれていたという中西さん。複雑に絡み合う登場人物たちの関係性、「チーム」「コミュニティ」という在り方に、憧れに似た直感があったのかもしれません。
自分でなんでもできる人ほど、「誰かに助けてもらう」ためのきっかけを、若いうちに得ることが難しい。相談したり、頼ったりする機会も少なくなりがちです。さらに年を取れば取るほど、人に甘えることができなくなってくる。
殻を破らさせられるような経験を経て肩の力が抜けたとき、「ずっと一人」ではなかったことに気付き、周りにいる他者の存在を感じた。そんなたった数か月前の自分自身を、懐かしむように語ってくれました。
この「変化」は、十年、二十年と年を経るごとに、価値を増してくるでしょう。
「他者とともに在る」ということが、この世界を豊かにしてきました。大切にしていきたいですね。