In Our Time | 前田塾塾生白書 ~ 仲間に出会う。時代を創る。

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第12回 中野 雄介さん(2019秋合宿)

つい最近行われた秋合宿に参加された中野雄介さんをご紹介します。

「このインタビューの話が来た時に、もちろん嬉しいけど、僕でいいのかな?って思いました。だって今まで出てきた人はみんな、すごいおもしろいですよね。いろんなこと考えてるし。僕は、本当にふつうなんです……」

とりあえずお話を始めていただくと、のっけからの「離島出身で…」で思わず前のめり。美しい島の写真もお楽しみください。[text: 西岡妙子]

おじいちゃんになったら島に帰るのが夢

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大学の理工学部の四年生で、管理工学を専攻しています。さまざまな技術を統合し、システム全体の設計やコントロール方法の研究、新たな管理技法などを研究する学科です。

大学受験では、第一志望の学校に落ちてしまい、現在通っている大学の理工学部と他大の経済学部に合格しました。実は、その時が前ちゃん(編集部注:前田恵一・前田塾塾長)との出会いで、母がもともと前ちゃんと知り合いだったため、学校選びでアドバイスをもらったんです。そして、経済はある程度自分で勉強できるが、理工系の学問は中々独学だと難しいと思い、理工学部に進学しました。

専攻を決めたのは2年次。大学院に進むつもりはなかったので、専門的なことよりは実用的なことを学びたいと考え、数学がもともと好きだったのと、経済学や心理学なども含めた科目を幅広く学べるこの学科を専攻しました。

今の大学は、内部進学の裕福な家庭育ちや、東京生まれ東京育ち、地方出身、帰国子女、いろんな人がいるのが魅力。僕は、甑島(こしきしま)という鹿児島の離島出身です。小さなコミュニティで育ったので、特にそう思うのかもしれません。

大学以外では、鹿児島の高校の先輩で、トップキャリアコース講師でもある衆議院議員の宮路拓馬さんの事務所で、インターンとして秘書の方のお手伝いをしています。来年4月からは農林水産省に入省が内定しており、宮路さんから「国家公務員になるなら、政治家の世界を見ておいた方がいい」とお誘いをいただきました。政治の現場を見て本当に勉強になるし、自分なりの考えが持てるようになりました。

今話題の「桜を見る会」問題について、もちろん問題はあるとは思いますが、他にももっと議論すべき重要な問題があるのに……と感じています。具体的な例で言えば、GSOMIAについて韓国が破棄を撤回し延長を表明した件について、また、社会保障に関する議論など国民に影響の大きい問題についてももっと議論を深めるべきだと、僕は思います。

国家公務員を志したのは、3年生で就活が始まったとき。甑島は、過疎化、少子高齢化が進み、だんだんとさびれてきています。島の産業は、漁業を中心とした第一次産業。これで、故郷を盛り上げていきたい。僕がおじいちゃんになって、仕事も引退したら、島に帰って孫と老後を過ごすことが夢なんです。

同じ問題を抱えている自治体は、甑島だけでなく、日本中にあります。地方振興に寄与するためには、民間企業よりも公、国で働いた方が、現実的に支援ができるし、やりがいもあるだろうと考えました。

もう一つ、海外含めいろんな場所で働いてみたいという思いもあり、国家公務員であれば、日本国内外、いろんなところに住めると思いました。英語をもっと勉強して、使えるようになりたいです。

公務員試験に合格し、面接の後、官庁訪問といって、実際に複数の省庁を体験し、説明を受ける機会があります。そのときに、農林水産省の職員の方々の雰囲気が、自分に合っていると思いました。また、食に関する仕事なので、ずっとなくならないだろうと(笑)。

技術の進歩は目覚ましく、つい最近もGoogle量子コンピュータが話題になりましたよね。秋合宿でも、前ちゃんがその話をしていましたが、今までの常識はどんどん塗り替えられています。

「スマート農業・漁業」という言葉も生まれ、第一次産業にも自動化・効率化が進み、過疎地域に使える技術開発がどんどん進んでいます。農水省の方々が、「農業はこれからだ」「農業の未来は明るい」とおっしゃっていたことが、すごく印象的でした。

でも、目下の課題は卒論です……(笑)。 プログラミングがあまりわかっておらず(笑)、なかなか卒論が進まななくて、教授に怒られています。年内にはなんとか、目途を付けたいと思っています。


みんなの話を聞いてまとめる調整型のキャプテン

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芦浜。小さい頃はよく兄弟、友達と泳いだり、釣りをしたり、潜って貝をとったりもしていました。

僕が生まれ育った下甑島は、本土の串木野新港からフェリーで2時間くらいのところです。薩摩川内市に属する甑島列島の一部です。下甑島の人口は、2000人くらい。島には高校がないので、高校入学から鹿児島市内で兄と二人暮らしをしていました。

僕の通っていた小学校は6学年で50人くらい、3学年で20人くらい。僕の学年は人数が多くて、同級生は10人です。下甑の小中学校も統廃合がすすみ、いずれは1校ずつになってしまうかもしれません。

島内には電車はないのですが、バスは結構あります。おじいちゃん・おばあちゃんが多いので、バスは必要なんです。街灯が少ないので、星がすごくきれいに見えるんですよ。水産業が産業の中心で、魚が本当においしいです。

島に訪れる機会があったら、母がホテル「こしきしま親和館」のおかみをやっていますので、皆さんよかったらご利用ください(笑)。母がもともと前ちゃんと知り合いなので、前田塾のことを話していただけるときっと喜びます!!

sinwakan.jp

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長浜。実家からの景色

子ども時代は、いつも外で遊んでいましたね。兄や弟、それから友人と。室内で過ごすときはゲームか漫画。「スラムダンク」とか「金色のガッシュ!!」など、王道の少年漫画が好きでした。今は「キングダム」がダントツでおもしろいです。

中学校には部活がバレー部しかなくて、そこから中・高とバレー部でした。キャプテンも務めましたが、僕はぐいぐい引っ張るリーダーというよりは、調整型です。みんなの意見を聞いて、まとめていく役回りでした。

大学に入ってからもバレーサークルで、結構一生懸命やりました。今でも、リフレッシュしたいときは、サークルに遊びに行って体を動かしています。

大学時代には、先輩にポーカーバーに連れて行ってもらったのがきっかけで一時期ポーカーにもはまっていました。参加費を払ってトーナメントに参加する、健康的なポーカーです。(笑)相手と向かい合う時の緊張感、観察して予測して、確率の計算をして……一度に感覚や思考、いろんな神経を使います。YouTubeで研究もしていました

(笑)

中学の時に、アメリカの西海岸に一か月ほどホームステイをしたことがあります。西海岸の過ごしやすい気候と、アメリカの大地の広大さに惹かれました。島は山と海に囲まれているので(笑)。海外勤務をしてみたいという気持ちは、このころの体験から来ているのだと思います。

母が働いていたこともあって、子ども時代はおばあちゃんが家のことをやってくれていました。毎日とても幸せそうだった島生まれのおばあちゃんが、ぼくの将来イメージです。30歳くらいまでに結婚して、子どもを何人か育てて、いずれは島に帰りたいですね。


勉強は一人でするものだと思っていたけれど

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母の紹介で前ちゃんと大学入学前に会っていたので、前田塾の存在は知っていましたが、なかなか予定が合わなくて。就職が決まってから、宮路さんの勧めで秋合宿に参加しました。

就職を前に、経営素養を身につけたい、Excelの作業効率を上げたい、また、優秀な人と会い刺激を受けたいと思っていました。

合宿では、大量の内容を一気に学びます。そうすると、自分のペースでは全然追い付かないから、分かってる人に聞くようになるし、分からない人に教えるようになる。「他者に分かりやすく説明できて初めて分かったということだ」と前ちゃんに前ちゃんに言われたのですが、説明できないと、いかに自分がフワフワな理解しかしていないかということに気付かされました。また、新しいことをインプットするときに、「他者に伝える」ということを意識しながら学ぶようになりました。

元々僕は、勉強は一人でやるのが好きでした。自分で調べ、自分で考えた方が、定着するし、長く身に付くと考え、分からないことも先生に質問せず、自分で考えることにこだわっていました。その方法に囚われていたと思います。でもそれだと、量はこなせない。

みんなで一つの課題に取り組むというのは、今までになかった新鮮な体験でした。

インプット量が多い人や、そういう仕事に就きたい人、またかつての僕のように独学独習でずっとやってきた人に、この体験をお勧めしたいです。

前ちゃんは、学びに対して貪欲という印象です。例えば、講義中に出た質問について説明している途中で、前ちゃん自身が気にかかるポイントがあったら、急に黙って考え込んでいました。かっこつけたり取り繕うことなく、考え込む姿が印象的でした。

それから、とにかく元気な人、という印象です。(笑)エネルギッシュですよね。僕らも影響を受けて、秋合宿のメンバーでさっそく新年会をやることになっています。

前田塾は、素直に「分からない」といえる人、そうなりたい人に合っていると思います。あと、人と話すの好きな人。

僕自身は、トップキャリアコースに参加してみたいと思っています。

合宿には、行動力が半端ない人がたくさん来ていて、参加者の方もいろんな世界を見せてくれました。そんな方々の話を聞いて、僕はずっと日本にいて、世界が狭かったなと、仲間からも刺激を受けました。

これから仕事を始めるにあたり、広いところを見ていきたいと思っています。

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島の様子のお話のときに、中野さんは、高齢者のことを「お年寄り」でも「ご老人」でもなく、ごく自然に「おじいちゃん、おばあちゃん」と表現されました。ご自身のお母さんのことは「母」と語るのに。

心の奥に、たくさんのおじいちゃん・おばあちゃんの顔があるのでしょう。穏やかで温かい島の様子が眼に浮かぶようです。「狭いコミュニティで育った」と中野さんは言います。でもそれは、多世代に渡る豊かなコミュニティ。

日本各地にある誰かの美しいふるさとを守るために、「これからです」とはにかむ中野さんの新しい物語が、胎動を始めました。

「社会の変化の中で、私たちは何を得たいのか、失いたくないのか、未来に何を残したいのか……そして、そのために何ができるのか」

改めてそう問われたようなインタビューでした。