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第11回 水野 雄介さん(2017春合宿/トップキャリアコース1期生)

今回ご登場いただく水野雄介さんは、2017年に大阪の合宿に参加、2019年からご就職とともにトップキャリアコースに参加されました。現在は弁護士として、東京で働いています。
「朝から晩まで会社にいます、それが一番楽しいので……」とのこと。オフィスビル内のカフェで、お話を伺ってきました。[Text: 西岡妙子]

ひとつひとつ現場で動き、事実を積み上げていく

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2017年に司法試験に合格、大分での1年の研修(司法修習)を経て、東京の法律事務所に就職してもうすぐ1年になります。所属する事務所が取り扱うのは、企業の合併、株式譲渡やM&Aなど、まさに前田塾のファイナンス講座で扱われるような内容ですが(笑)、その中での企業間や企業対個人などの紛争解決などを担当しています。

兵庫県出身で、大学は大阪でした。大学進学時は、東京に行く気はなかったのですが、大学院進学を意識した頃、将来は国際的な仕事をしたいと考えていたため、仕事が集中している東京を選択しました。

大学に入学したときは、法律にはそれほど興味がなく、法学部に進学したのも、法学だけでなく政治学、経済学、社会学など、文系の学問を広く学べることに魅力を感じていました。外交官など国際的な仕事をしたいと考えていましたが、外務省にご勤務されている弁護士の方のお話を聞く機会があって、それまで「離婚や交通事故などの問題解決をする職業」というイメージだった弁護士のイメージががらりと変わり、弁護士としての職業の幅の広さを知り、目指すようになりました。

現在の仕事は、大学で勉強したことの延長線上にあり、学んだことが生きていてとても面白いです。国際訴訟など案件が大きく複雑なため、チームで取り組み、解決まで複数年かかります。私が入してから終わった案件はまだありません。

今はまだ、言われたことをこなしていくだけで精一杯で、上司からの指示を待ってしまうところがあります。弁護士事務所は、組織でありながら一人一人がプロであり、そうでなければならない。自分で考えて動く、能動性がまだまだ足りてないなと思っています。

なので、これからの目標というよりは、現状目の前にあるものに集中して、自分の裁量を増やして行きたいと考えています。周りから、「任せても大丈夫」と思われるような人間に成長したいです。

国際関係の大きな仕事とは別に、同性婚をはじめとするLGBT問題にも関わっています。例えば企業の中で、同性同士のパートナー関係になったときにお祝い金が出ない、ハネムーン休暇が取れないなどの問題や、住宅ローンを共同で組めない、生命保険の受取人になれない、ケータイの家族割に入れないなど、小さな差別はいろいろ存在しています。これらの解決に取り組む企業も増えてきていますが、その動きをもっと広げていきたいと考えています。

もちろん法改正されるのが一番ですが、もう少し時間がかかりそうなので、最終的には改正を目指しつつ、ひとつひとつ現場で動き、事実を積み上げています。

弁護士というと、「社会派」と呼ばれるような、弁護団を結成し訴えていく大きな活動が注目を集めがちですが、企業法務の周辺で、こういうやり方でアンフェアをひとつずつ解決することもできる。それも弁護士の一つの魅力かもしれません

性的指向の差別だけでなく、性別、いわゆるジェンダー問題にも関心があります。女性の権利や地位向上は女性だけの問題ではありませんから、平等を実現するためには、男性が関わることが大切だと思っています。

顔が見える距離でみんなを盛り上げられる現場が好き

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カタリバ時代

子ども時代は……客観的に見るのはなかなか難しいのですが(笑)、学級委員などをよくやるタイプでした。前に出るのが好きで、リーダータイプ……といえるかもしれませんが、でも、生徒会はやらないんです。

手が届く範囲のリーダーをやりたい。現場主義ですね(笑)。大きな組織のトップになるよりは、自分で考えて実践できるサイズの中で、顔が見える距離でみんなを盛り上げていく現場が好きでした。

ピアノを習っていたので、合唱の伴奏をして指揮もやったりして、おいしいところを取りたがる子どもでしたね(笑)ピアノは大学まで習っていて、本当は今も弾きたいのですが、家に楽器がなくて。作曲家は、そうですね、ベートーヴェンが好きです。

1学年50人の小さな学校で小・中と地元で過ごし、今でもお正月に小学校の先生の家で集まるのが楽しみです。高校は京都に、大学は大阪に、と、学校が変わるたびに人間関係が変化してきました。

司法試験受験後、研修が始まるまでの間、半年ほど時間があったので、以前から関心のあったボランティアを少しやりました。その時にちょうど募集の出ていた、NPOカタリバでの活動を始めました。カタリバ自体の活動は、高校で出張授業を行い、大学生などのボランティアが高校生ひとりひとりとの対話を通して、キャリアについて考えるきっかけを作る、「カタリ場」というプログラムが主ですが、私はそのようなプログラムにも参加しつつ、メインは文京区にある「b-lab」という施設で中高生の日々の話し相手・遊び相手になりながら、彼らのチャレンジをサポートするという活動をしていました。短い期間でしたが、中高生の若さに触れ(笑)、希望や情熱の持つエネルギーを感じさせられました。

また、みんながみんな話好きではない中で、どうやったら話をしてくれるようになるだろうと試行錯誤していましたが、そういう日常のコミュニケーションを通じて相手の考えや気持ちを想像する力を中高生に鍛えてもらいました。カタリバで得たつながりは今でも続いていて、職員の方々やボランティア仲間との飲み会に、成人した当時の高校生が来たりするとなかなか感慨深いですね。(笑)

www.katariba.or.jp

b-lab.tokyo

 

 

今は仕事が好きで楽しいので、仕事しかしてないですが(笑)、たまの休日には友達とおいしいものを食べに行くのが好きです。ピアノ好きとしては、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』の映画も気になっています。

参加を決断したこと自体が、大きな変化

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トップキャリアコース1期生

前田塾に初めて参加したのは、2017年3月の大阪での合宿でした。司法試験の1か月前。合格したので良かったです(笑)友人が武者修行に参加していたこともあり、FBで前田塾のことはよく見かけていて、おもしろそうだなと興味があったので、内容も分からないまま、わりとすぐに申し込みをしました。

知らない人たちの中に飛び込むという前田塾合宿のような体験を、それまで僕はしたことがなく、結構慎重なタイプだったんですけど、東京に行ってちょっと変わったのかもしれません(笑)。「合宿に行って何が変わったか」って、決断したことがすでに大きな変化だった気がします。新しいつながりに飛び込むということ、それができたので。

合宿は、行ってしまえば集まって数日過ごすので、仲良くなれます。なので、今までそういう形で何かに参加したことがない人でも、全然大丈夫です。

そのあと、大分での研修生時代に、出張講座にも参加しました。大分で出会ったN園さんというおもしろい方がいて、彼は前田塾の1期生だったそうです。何かが始まる黎明期に飛び込むって、やっぱり特別なこと。「そこに集まる1期生もおもしろい人が多いんだろうな」という思いがあり、そんなN園さんに影響されたこともあって、トップキャリアの1期生も、話を聞いてすぐに申し込みました。

講師の先生がいろんなジャンルの若手創業者ばかりで、一つ一つ独立した講座としても面白そうだし、15回まとめてすごい人たちの話が聞ける、来る人とも友達になれそうだし、飲み会までついてる、なんというお得なパッケージだ!と思っていました。

正直、どうなるかわからないけど、よくわからないからこそやってみよう、と(笑)。参加者も変わってる人が多いんだろうな、どんな人が来るのか見てみたい、という気持ちもありました。

一般的に、仕事を始めると同時に、専門的になる分、世界が狭くなりがちだと思います。その業界や社会的・時代的背景など、自分の身の周り以外の世界で、今、何が起きているのか知ることができたのは大きかったです。

ビジネスに関心がある方や、起業したい方には活用できることが多いと思いますが、どんな人にもおもしろい講座。いろんな人が参加した方が講座として面白くなるので、興味があればぜひ行ってもらいたいです。

前ちゃんは、「コミュニケーション能力が高い」というよりは、人と仲良くなるのがうまい、というか……「人たらし」じゃないですか。どんどん人と仲良くなって、どんどん輪を広げて。「それが苦じゃなくて、楽しめるってすごい、こんな人いるんだ」って、驚きました。僕だと、ちょっとストレス。だから、真似できないし……まあ、真似したいとも思わないかな(笑)

でも、そういう自身の特性や強みを生かして、ビジネスや人生にそのまま自然に反映させているのは、すごいなと思うし、そこは真似したいところ。私は私の個性を生かして、そうなれたらいいなと思います。

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水野さんは、時折ご自身の心の奥に深く潜るようにしながら、とても静かに話します。誠実で的確な言葉が光っていました。

数年かかるような国際的な仕事に取り組みつつ、コツコツと国内の課題にも対応。私たちの暮らしの中にも、当事者でなければ気付きにくい差別や固定観念、社会規範は、あちこちに存在します。そのひとつひとつを丁寧に検証し、グローバルとローカルを自由に行き来しています。

人の心に優しく寄り添う弁護士として、すべての人がその人らしく生きる権利が守られる社会のために、一歩一歩積み上げていかれることでしょう。