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第9回 北村 仁さん(2018夏合宿/トップキャリアコース1期生)

今回ご登場いただく北村仁さんは、合宿とトップキャリアコースに参加されました。

現在は、学生、学習塾の講師、そしてBizjapanの代表。

過密スケジュールの合間を縫ってお時間いただき、インタビューしてきました。

[Text: 西岡妙子] 

目の前にいない人にも、どれだけ想像力を働かせ、繊細に思いを馳せられるか 

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NPO法人Bizjapanの6期生で、代表を務めています。Bizjapanでは、メンバーがやりたいこと・興味のあること・課題の解決を実現するために各々でプロジェクトを立ち上げて活動するのですが、1年目だった昨年は先輩がリーダーだったプロジェクトに飛び込み、今年は代表としてコミュニティ全体のマネジメントをしつつ、自分のプロジェクトを立ち上げています。

bizjapan.org

大学2年生ですが、本業はどちらかというとBizjapanですね(笑)というより、どこまでがどっちか分けられないような生活をしています。
大学では、法学部の法学総合コースを専攻しています。司法試験や政治家を目指すだけではなく、もっと根本にある、法律を作るための思考の枠組みを探究したいなと考え、進路を選択しました。
もともと今の学部を志望した高校生の頃は、特に自分の中にはっきりと「何がしたい」というものはなかったのですが、尊敬する先輩が進学した先であり、特に他に行きたいところもなかったので、進学しました。そして学ぶうちに、その深さとおもしろさに気付きました。
理系の大半が物質に焦点を当てているのに対し、文系、特に法学は、人とその生き方に向き合う学問かな、と思います。「人はどうすればより善く生きられるのか」「どういう営みをすればよりよい社会になるのか」。
人々が生きてきた歴史、生き方から真摯に学び、そしてどうするかを考える。過去、現在、未来に生きる全ての人に向き合い、肯定する。法学はそういう素敵な学問だと、感じています。
「そもそも『善い』とは何か」。何が「善い」かも、その人が置かれている立場や文化的背景によって、当然定義が変わってきます。目の前にいる人はもちろん、目の前にいない人にもどれだけ想像力を働かせ、繊細に思いを馳せられるかが、法学を学ぶ自身に問われるんです。
そういったことが心にあるようになったきっかけは、小学校の頃に遡ります。大晦日に、家族で紅白を見ていたんです。子どもはたいていそうでしょうけど、演歌って興味ないですよね。それで、演歌が流れてるときに、「こんな曲要らないのに」と言ったら、父が「こういう音楽は誰のためにあるか、考えたことはあるか?」と。

「私たちはこたつでミカンを食べながら家族そろって紅白を見ているけれど、今この時も高速道路で荷物を運んでいるトラックのドライバーもいる。そういう人が、休憩で入った師走のサービスエリアで聞きたい音楽は、果たして本当に流行りのポップスだろうか? 世の中にはいろんな人がいて、様々な人の働きによって、私たちは正月を迎え、普通に暮らすことができるんだよ」と父に言われ、ハッとしました。その時の恥ずかしい思いは、今でも鮮明に残っていて、現在の僕にも影響している、のかもしれません。
今、僕自身が直面している課題としては、「人に仕事をお願いすること」「人を動かすこと」の難しさがあります。組織の代表として動いていると、情けないことに人の気持ちが見えなくなるようなときがあります。役職に就きながらも、周りの人の立場を想像してより良いものを共創していくことができるように意識しています。

将来どんな風に生きていくかは、まだ全くの未定です。自分の事業を立ち上げるか、国家の中枢に入って責任ある仕事をするか、お客さんの顔が見える仕事をするか、正直わかりません。

ただ、どんな環境であれ、まっすぐ生きている人・努力している人が、正当に報われる社会にしていきたい。そんな社会にしていくべく、自分に与えられた恩恵と責任をしっかり背負って生きていこうとは心に決めています。

みんな、それぞれの人生がある。それがおもしろい。

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幼いころにスペインに住んでて、そこでサッカーを始めたんです。……というと、始め方はすごい本格的ですよね(笑)そのあと小中高とずっとサッカーをやっていて、高校ではキャプテンも務めました。

小学生の頃はずっと遊んでいる子供でした。中学受験をしたのですが、小5くらいまでは塾が嫌いで(笑)公園で遊んだりゲームしたり、わんぱく小僧でしたね。
中高一貫校で、サッカーを部活としてやりながらも、将棋やカードゲームにはまったり陸上やってみたり……やっぱり遊んでばかりでしたね。文化祭や体育祭の行事も全力で。大学受験の勉強は、直前から。典型的な男子ですよね。

スポーツ観戦なんでも好きなんですけど、今は特にNBAが好きです。見たことありますか? 絶対見た方がいいですよ!! NBAの何が面白いって、プレーの華やかさよりも、プレイヤーに注目する素敵なリーグであるという点だと思っていて。その人がどう生きてきたか、なぜバスケをするのか、人生哲学をコート内外でどう表現するか……プレイヤーのストーリーが紹介されます。プレイヤーだけじゃなくて、レフェリーや、アリーナの警備員、観客に至るまで、NBAを作り上げる人、一人一人にフォーカスするんです。みんな、それぞれの人生がある。それがおもしろい。……さっきの紅白の演歌の話にもつながってますね。

読書も好きです。今読んでいるのは、オーウェルの「1984」。いわゆる「古典的名著」を、法学をきちんと消化し始めた今だからこそ、せっかくだからと思って読んでいます。「『読んだことない本なのに、人に聞かれると読んだことがあるフリをしてしまう』というパターンは、実は世界共通だ」と何かのアンケート結果で読んで、ほっとした反面「読んだふりしないで、ちゃんと読んでおこう……」と思った、という話は内緒です。

この本でも、生き方や社会について、何が「善い」かということを考えされられます。答えは簡単には出ないし、ずっと出ないかもしれない。でもだからといって、その問いから逃げたくもないなと思っています。

自分はアタマがイイと思っている人にオススメ

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前田塾5周年記念パーティー(2018年)

前田塾とは、去年の夏合宿が最初ですね。Bizjapanはもともと、立ち上げ時に前ちゃん(編集部注:前田恵一 前田塾塾長)にすごくお世話になったんです。0期生、1期生は多くのメンバーが前田塾で学んでいたそうですが、最近ちょっと団体として疎遠になっていたこともあり、久々に関係復活させようということで、先輩から「行ってみないか?」と声をかけられて。先輩と一緒に僕が行くことになりました。

合宿の中では、課題に対して、その時の好奇心を爆発させて、調べて考えて何も知らないところから積み上げていく、という体験が、久々に楽しかったです。

合宿から帰って、しばらくして、大きな枠組みの部分で変化があったことに気付きました。経済の講義もあって、お金をいろんな形から扱うんですね。「お金って何だろう」に立ち返る。いろんな要素がある中で、「お金=価値の代替・見返り」という部分が腑に落ちて、世の中の見え方が「価値」の流れとしての構造で捉えるようになりました。

そのあとトップキャリアコースにも参加しました。ちょっと背伸びでしたね(笑)。時間をちゃんと割くことができなかったかな、と思う部分はありますが、内容はすごくおもしろかった。トップキャリアコースには、何が欲しいのか、求めるものを明確にしてから参加すると、より得るものが大きいでしょう。

トップキャリアコースの講師の方々は、確かにビジネスの最先端にいて、なかなか話を聞けない人ばかり……だけど実は、学生という立場だと、自分で動いて「話を聞きたい」と言えば会っていただけることもよくあります。学生の特権ですね。多くの方のご好意に甘えさせていただいていること、謙虚に感謝しながら吸収していきたいと思っています。

前田塾は分からないことを分からないといえる場。自分なりに考えることから始まります。

合宿は、自分に見栄張っちゃう人、自信がある人、自分はアタマがいいと思っている人に、お勧めします。この表現で、「あ~、自分のことだ」って、分かる人は分かると思います(笑)。「資格を取るわけじゃないから必要ない」と逃げて済ませたいような、だけどちょっぴり大切な内容を、専門問わず学べます。

前ちゃんは……おもしろい人ですね。楽しい人です。しっかり社会人なのに、子どもです(笑)実は夏合宿のとき、大阪にすごい台風がきて帰宅できなくなったんですよ。そしたら前ちゃんが「みんなでもう一泊延泊して、徹夜で人狼やろう」って提案して、ほんとに一晩中人狼をやって。アホだけど、めちゃめちゃ楽しかったですね。

分からないことを聞けば、何の見返りも期待せずに、いろいろと情報や知識を提供してくれる社会人の方もいらっしゃいます。pay forwardしてくださるんです。前ちゃんが、そうしてくれた一番最初の人。僕がのびのびと頑張れたのも、その優しさのおかげです。

Bizjapanでは、前ちゃんを招いて前田塾無料講座を年に数回開催しています。僕も参加して毎回受けていますが、何度聞いても学びがあるし、後輩にも伝わっていくことがとても嬉しいです。

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 初対面の緊張を一瞬で和らげる優しい笑顔。話し上手で聞き上手。途中何度か脱線しながら、楽しいインタビューとなりました。

みそかのこたつで聞いた演歌が、人生の重要なモチーフになる。どんな人生にも、「宝物」と呼ぶにはあまりにも素朴な、だけどその人を築くエピソードが隠れています。

「みんな、それぞれの人生がある。それがおもしろい」

私もそう思います。