In Our Time | 前田塾塾生白書 ~ 仲間に出会う。時代を創る。

前田塾参加者をつなぐ 新世代型コミュニティチャンネル

第14回 岡浦 加奈さん(2013 選抜コース1期生)

今回はなんと、2013年前田塾開講時の生徒さん、つまり1期生の方がご登場。

新卒でベンチャー企業に就職し、外資系戦略コンサルティング会社に転職しご活躍されていえる岡浦加奈さんをご紹介します。

「先に大手、というのはよくあるのですが、私は逆を行きました」その理由も語ってくださいました。[Text: 西岡妙子] 

 伴走できることが成長につながっている 

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外資系戦略コンサルティング会社に勤務して4年目になります。

新卒で、当時20名程度のPR会社に就職し、2年間勤めました。最初の就職先としてベンチャーを志望したのは、自ら提案に関わり受注を受けて制作し、納品し、お金をいただく……そのお金を生み出す流れ全体の経験を積みたかったから。それを体験できそうな規模感の企業を探していて、良い出会いがありました。

そこで様々なお客様のPRやマーケティングに関わる課題解決をご支援しているうちに、その前後の工程にあるような製品開発から営業、またはより上流の経営に関わる課題も見えてくるようになりました。そういった経営全般に関わる課題解決に興味を持つようになったものの、PR会社の看板ではお客様に提案できません。それでより幅広い企業の経営課題に携わるコンサルティング業界へ足を踏み入れることにしました。経営者とともに働きたい、また、海外で働きたいという思いもあり、外資系の戦略コンサルに絞って転職活動をしました。

現在の業務は、プロジェクトベースで、1~3か月ごとにお客様が変わります。テーマはもちろん、業界も変わるので、その都度イチから勉強です(笑)。経営者の方々のお悩みに向き合うわけですから、テーマは簡単なものではないし、苦しいこともあります。毎回もうこれ以上は伸びませんというところまでストレッチをさせられるような感じです(笑)。でも、新たな意思決定がされ、変化が起きる、そのプロセスはほんとにおもしろくて、それに伴走できることが自分の成長にもつながっていると感じます。

様々な業界の方々と協働してきましたが、今関心があるのは「ヘルスケア」分野。日本のみならず、世界中の関心を集めているトピックですよね。デジタル技術の導入や新薬開発をはじめ、海外進出に挑戦する企業も多く、まさに今過渡期だなと思います。

私自身の課題は、現場チームの責任者の一人として、お客様との関係をどう作っていくか、ということ。与えられた仕事をこなすだけでは、満足する結果は得られません。お客様を巻き込み、提言を実行していただけるような流れを作っていく。毎日が挑戦です。

長期的な目標は、日々様々な業界の課題に向き合っているものの、自分の中に明確な原体験がなくて……人生を懸けて「これをやりたい・これを解決したい」というものが見えたら、大きな挑戦をしようと思っています。具体的な人生目標がない今は、むしろ、やりたいことがある人、パッションを持った経営者の右腕として、その人の夢を実現するサポートができたらいいなと思っています。国内外問わず、好きな場所で、好きな人たちと、仕事をしていきたい。夢がある人のサポートができるような武器を身に着けていきたいと思って今の自分を位置づけています。 

 人からの評価指標で 自分の人生を生きていた

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さいころはというと、当時から自立心が強く、一人でどこかに行っちゃう子でした(笑)。幼稚園のころ、必要なお金だけ持って、バスに乗って駅前の本屋さんに本を買いに行ったこともあります。料理をしたり、重い荷物を持ったりする時も、親に手伝わせない子供だったそうです。

大学に入って初めてパスポートを取得したのですが、その5日後には航空券を取って韓国に行ってきました(笑)。両親は、やりたいことにあまり反対せず、自由にさせてくれていましたが……半ば諦めていたのかもしれませんね(笑)。何も言わずに見守ってくれて、本当に感謝しています。

そんな性格ではあるものの、中高時代は真面目で、典型的な優等生タイプでした。勉強ができるという意味で目立ったがゆえに、気づかぬうちに周りの先生からの期待や、勝手に美化された優等生イメージにがんじがらめになっていて。

大学受験に失敗をして、志望校ではない大学に入学した後、偶然大学内で同じ高校の知り合いに会って「あれ、なんであの岡浦さんがこの大学にいるの?」と純粋に驚かれたことがあるんです。その時はひどく挫折感を味わいました。

でも、それがきっかけで「これで挫折感を覚えるということは、結局人からの評価指標で自分の人生を生きているんだな」と気づいたんです。「人からの期待や敷かれたレールを辿ることを自分の目標にすり替えるのは楽だけど、後で振り返った時に自分で考え納得して選んだ道だと思える人生にしないといけないな」と。

大学の友人たちが有名な大手企業に就職する中、あえて無名のベンチャーを選んだのも、こういった経験も繋がっているのだと思います。

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スロベニア ブレッド湖

プライベートは、国内外いろんなところに旅行に行っています。特に思い出に残っている国は、スロベニア。現地の方の家庭に宿泊させてもらったのですが、景色が良くて、人があたたかく、のどかで穏やかで。あくせく働くことがすべてではないと感じました。

社会人になってからは日々、平日は思いっきり働きますが(笑)、土日は月に1回は国内旅行に出かけたり、プロジェクトの合間には海外旅行に行ったり、自分が普段生活の大半を過ごすコミュニティや社会の外に出て、息が詰まらないように、そして視野が狭くならないように意識をしています。

そういった意味では、本も非日常の世界を体験できる一つの手段だと思っていますが、私の場合は基本的には仕事で必要なものを読むことに追われています。仕事関連以外で最近読んだ本の中では、巷で話題の「サード・ドア」がおもしろかったです。それこそ敢えて思い込みのレールから外れることや、人生の価値観について考えさせられました。

生き方として折に触れて読んでいるのは、「白洲次郎 占領を背負った男」という本です。学生時代、進路を考えているときに人に勧められ手に取ったのですが、彼の生き方は本当にかっこよくて、信念を持って生きていく姿にあこがれています。私の座右の銘は「意志あるところに道あり」で、まさに彼はそれを体現しているような生き方をした人なんです。

今後のプライベートについては、周りで結婚や出産を経験する人たちも増えてきて、結婚や出産、育児を自分ゴト化して考えるようになってきました。コンサルティング業界はもともと女性が少ないこともあって、職場にはワーキングマザーはそこまで多くはいません。一方で職場の海外オフィスを見てみると、子育てをしながら普通に働いている女性コンサルタントも多く在籍しています。

会社の制度の云々の問題だけではなく、日本は女性が働くための社会インフラの問題もあって、一人の力でどうにかできるものではないと思うので、いろんな人やサービスの助けをお借りしながら、両立する道を社内で作って、ロールモデルになっていければと思っています。

バックグラウンドが異なる優秀な人ばかりが集う稀有なコミュニティ

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前田塾との出会いは、7年前のこと。1期生になります。前田さんのFBの投稿を見かけて、メッセージを送ったのがきっかけです。

前田さんには、就職活動の時にお会いしていたんです。ベンチャーに就職したいと考えていたけれど、学生の目線では限られた情報の中で企業の良し悪しを判断できなかったので、友人の紹介で前田さんに相談させていただいてたんです。いつも明るい前田さんは、私にとって、ビジネス界のお父さんです(笑)。出会った当時の私が何に悩み、何を考えていたのかを、(私自身すっかり忘れていることまで)数年経った今でも覚えてくださっていたんです。ほんとに真摯に目の前の相手に向き合ってくださる方なんだなと。

当時まだ学生で、社会人になるにあたって、1社目がベンチャーということもあり、世の中の動きや経済、会計の知識など、ビジネスの基本を理解してから入社しておきたいと考えていました。

知識を求めて参加した前田塾ですが、そこで得た友人たちとのつながりは、今でも貴重です。社会人の方も多かったので、「社会人になるって、こんな感じなんだな」とイメージすることができ、いきいきと働かれている姿から、たくさん刺激を受けました。その時の前田塾同期と、転職した先で同期になったり、不思議なご縁を感じています(笑)。

また、人生や生き方について考え、視野を広げるいい機会になりました。全く違うバックグラウンドの、それも優秀な人ばかりが集まった稀有なコミュニティだったと思います。

AIから政治まで扱っているトップキャリアコース、おもしろそうですよね。前田さんからは1期の頃の前田塾とコンテンツも変わっているよ!と伺っているので、ライフステージや社内での立場が変わるタイミングで、世の中のことを学び、スキルを高めるために参加したいと思っています。

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バス代と本代だけを握りしめてたった一人でお買い物に出かけた小さな女の子が、そのまま大きくなり、世界を飛び回って仕事をしています。

今の状況からできることを探すのではなく、「やりたいこと」「在りたい姿」をまず定めて、そこにたどり着くためにとにかく動きます。でも無鉄砲すぎるわけでもなく、使える武器を集め、着実に作戦を練り、必要な荷物だけを持って……。

でもそこに至るまでには、いったん「自分」を見失い、痛い思いも体験して、「自分」に再会し、そして強くなりました。

ジェンダーバイアスが強いといわれている日本で、女性がキャリアを積みながら生きていくのは、なかなか大変なことです。でも岡浦さんは、彼女なりの答えを見せてくれるような気がしています。お話を聞いているだけで、応援したくなりますね。

当ブログの前田塾長の記事を読んで、「『寂しかったから始めた』なんて、全然気づかなかった! ちゃんとしているように見えてましたよ~」とのこと(笑)!

開講から6年、延べ4000名の方に参加いただいている前田塾。まだまだ仲間募集中です! 

 

第13回 森 太一さん(2017秋合宿)

今回は、2017年秋合宿に参加された医大休学中の森太一さんをご紹介します。

止まらないほど話題が広がり続ける楽しいインタビューの中で、質問を投げかけると、「おお、それはおもしろい質問ですね……」とぐっと黙り込んで考え思索に沈む、その緩急の差が印象的でした。

「分からない」を「おもしろい」の入り口ととらえられたら、日々は「おもしろい」だらけです。[Text: 西岡妙子]

隣の芝は青く見えるというのなら、どれだけ青いか見てやろう。

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北海道旭川市にある医大の4年生ですが、実習に入る前に休学して、もうすぐ1年になります。この一年、いろんな経験をしました。

休学をした理由の一つは、医療の未来を見極める必要性を感じたからです。診療の際の意思決定プロセスを考えれば考えるほど、「AIの方が対時間、対報酬あたりでいい仕事ができるんじゃないか?」と、危機感に似た仮説に至りました。

医師が、知識・経験を価値として提供し、報酬を得ているのならば、それはAIで代替可能であり、医師の本質的な価値は最も代替可能なのではないか、と。すぐにその時代が訪れないとしても、自分が医師として働き盛りの時代にはそうなるなと思いました。

「医師に必要なのは知識だけじゃない、人間性やリーダーシップも重要だ」という見方も分かりますが、それはどんな仕事にだって必要なこと。

それで、自分の身の振り方を再考する必要性があるのではないかと考えました。しかし、こんなことを考えている人が周りにいなく、周りがおかしいのか、自分がおかしいのか……について結論がつけられず、とりあえず休学にしたんです。

もう一つの理由は、医学部で勉強を続け、この後研修医、医者となっていくにつれて、専門性が高まる反面、世界が狭くなるな、と感じたことです。視野と可能性を広げて、他の世界も見ておかないと、本気で飛び込めないと思いました。医学は本当に面白い分野なのですが、他のジャンルへの好奇心が止められなかったんです(笑)。隣の芝だから青く見えたのかもしれない。だったら、どれだけ青いのか見てやろう。そんな気持ちでした。

大学3年時に海外ビジネス武者修行プログラムに参加し、戻ってきて休学しました。武者修行を運営する旅武者で、営業インターンをしています。休学してすぐのころには、前田塾の大阪展開に挑戦していました。今は、医療ベンチャーに勤務していて、復学しても業務委託で仕事を続けさせてもらえることになっています。

mushashugyo.jp

その会社で、メンタ―というべき人生の先輩に出会いました。50代の大学教授で、その会社にも勤務し、好奇心を忘れずに、医師としての仕事もとても楽しんでいる先生の生き方を見ていて、大学に戻って医療の道をもう一度目指す決心ができました。

医療問題は、日本最大の課題のひとつ。このまま医療費が高騰を続けると財政は破綻し、現状の保険医療を提供出来なくなることは必至です。そして、高齢者の増加に対応するためには、効率化は必須です。

現在、来るべき超高齢者社会に対応すべく在宅医療が増加しています。一方で、在宅医療等は始まったばかりという部分も多いため、効率化の余地が多分にあるかと考えています。特にデータを用いることでもっと効率化出来るのではないか。そうすれば、医師・患者さん双方にとってより良い医療を届けることが出来るのではないかと考えております。今の勤務先でも、データによる在宅医療効率化に関連した業務を行っています。

とにかく元気が良かった

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年子の弟(左)と。

医大を志したのは、高校生の頃。

中学生のころにリーマンショックがあり、父がそのあおりで苦労していました。それで父は、僕と年子の弟に、「ただ良い大学に行き、良い就職をするというのは意味がない。大学に行きたいなら、目的を持って進学しなさい」と言っていて、大学では何か目的をもって学ぶか、研究をしたいと考えていました。

高校入学時には、宇宙工学に関心があり、高2のときに、JAXAで開かれた5泊6日の「サイエンス・サマー・キャンプ」に参加しました。そこには全国から宇宙好きが来ていて、周りの「宇宙好き度」に負けた、と思いました(笑)。太陽光パネルの美しさについて熱く語ってる同年代のマニアがいて、ちょっと僕にはないな、って(笑)。それで、進路を考え直したんです。

自分にとって大切なことは「自由」。どうすれば自由になれるか、自己裁量を増やして生きていけるか……。「自分に確固たるもの、手に職があればいいのではないか」と考え、医師を目指すようになりました。宇宙にも、医療の側から関わることもできますし。

生まれ育ちは鳥取で、小・中・高と、ずっと野球をやっていました。弟がキャッチャーで、僕はピッチャー。打順は1番が多かったですね。切り込み隊長的な役割です。とにかく元気が良かったからかな。(笑)

大学からは、せっかく北海道に来たんだから北海道でなければできないことを、と思って、カヌー部に入り、川中心の生活を送ってました。北海道には美しい川がたくさんあるんです。やるなら徹底的に、と思って、大学3年の夏まで打ち込みました。

普通のスポーツだと、チームが弱いと「勝てない」や「下手」で終わりですが、カヌーで、「弱い」はすなわち「事故」そして「死」を意味します。だから、安全こそが、部活のキー。チームの力を見極めて、シビアな判断が必要になります。うまい人が多ければ激しい川に挑戦できるし、初心者が多ければ無理はしない。シビアな意思決定をし、難所に挑戦する先輩たちが楽しそうだったので、先輩を目指してがんばりました。水を感じる日々を送り、少しずつ技を磨きました。

身体を動かすのが好きなので、ときどき家の周りや公園を走ってリフレッシュしています。

最近読んだ本で面白かったのは、サマセット・モームの「サミングアップ」というエッセイ。勤務先の先生に勧められて読みました。人生や考え方について鋭く切り込んでいて、長年思っていたことが言語化された部分もあり、すっきりしました。

それから、HBR 10 Must Read Seriesの「Mental Toughness」を今読んでいて、おすすめです。

エントロピーの増大に乗っかって行ったらどうなるだろう?

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前田塾に参加したのは、2017年の合宿が最初です。在学中に参加した武者修行のコミュニティで、「前田塾」というワードが度々話題に上がっていたので、ずっと関心がありました。

自分の中に実務レベルでできることを増やしていきたい。それから、これから生きていく上で、何をやるべきか、大まかな世界地図を得たい、と思ったからです。開講されることを知り、すぐに申し込みました。どんなものか、確かめに行こう、と。

受講して、社会からの情報の取り方、自分なりの咀嚼の仕方、それから道に迷ったときに、どうやって確かめるかその術を学びました。自分で情報を解釈できるようになると、今やっていることや、これからやるべきことの意味が分かります。そのうえで道を選んだ方が、おもしろいのではと思いました。

参加するのは、若ければ若いほどいいと思います。中学生で参加したかったくらいです。大学選ぶときに、自分が何ができて何をやりたいのか、そのためにはどの大学のどの学部なのか、そういうことを考える時間も、情報も不足している。模試の結果や偏差値だけでは、進路を選べるはずがないですよね。

前ちゃんには、一番最初に、ブロックチェーンのことで話しかけたんです。僕の話を聞いて、「こういうこと?」って言い換えて具体に落としてくれて、僕の「知りたい」という欲求に対して、いろんなボールを投げてくれた。そして、分からないことは「分からない」ってはっきり言ってくれるところが、すごいなと思いました。分からないことをごまかそうとする方はたくさんいましたから、率直で信頼できると感じましたし、その「在り方」を学びたいと感じました。

前ちゃんイズムに影響を受けて、大阪前田塾をやったり、ホームパーティーをやってた時期もあります。(笑)旭川に戻るので定期講座への参加は難しいのですが、今後もAI系の講座にまた出たい。

maedajukumath.site

復学後は実習ののち、国家試験に向かって勉強して、ゆくゆくはASEANで働ける医者になりたいと思っています。地域に縛られず、海外で働くことも視野に入れたときに、アメリカの医師免許取得が今は流行っているのですが、このペースではおそらく供給過剰になっていく。ASEANは戦略的に成長している地域であり、何よりも、アジアのエネルギー溢れる感じが大好きです。社会改革のためには医療ビジネスにも関わっていきたいですが、まずは現場を知りたい。

「エネルギー量は増大し続け、やがてカオスとなり、最後は死に至る」というエントロピーの法則を学んだ時に、わくわくするけれど怖いな、と感じました。安全に生きていくためには、エントロピーを抑える方向を目指すべき。でも、「エントロピーの増大に乗っかって行ったらどうなるだろう?」とふと思ったんです。アジアのカオスにエネルギーを感じたように、カオスの中の恐怖を押さえるのではなく、その熱量を利用できたらおもしろいだろうな、って。そのためには、振り落とされず生きていく術を得なければならないし、才覚も必要。まだ若いので、「自分の才覚で食べていく」方向を目指して、エネルギーの増大を感じて生きてみたい。

「広大な宇宙の中で、我々は生まれて死んでいく。人間の小さな人生に意味はない」という趣旨のことが、先ほど紹介したモームの本にも書かれていて、「生きていることに特別意味はない」と、共感しています。意味付けしたいという思いもありますが、「意味がない」が大前提だというのが僕の考えです。

だからこそ、面白いことは、自分で見つけていきたい、面白くしたい。「おもしろき こともなき世を おもしろく」という高杉晋作の句が表しているような在り方で、生きて、切り開きたいと、強く思います。

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「人間たちは、急行列車に乗り込むけれど、自分たちが何を探しているのか分かっていない。子どもたちだけが顔を窓にくっつけて、夢中で外を見てるんだ」

というサン=デグジュベリ『星の王子様』の一節を思い浮かべました。

「世の中はそういうものだから」と納得し、あるいは諦めて、小さな疑問に蓋をして……。そうやって、感覚を麻痺させることに慣れてしまった大人たちにまっ直ぐな問いかけを投げかけるのは、子どもたち。多くの寓話にもそう描かれています。

好奇心を大切に、失敗も成功もひっくるめてのたくさんの体験談。冒険の続きが気になりますね。

第12回 中野 雄介さん(2019秋合宿)

つい最近行われた秋合宿に参加された中野雄介さんをご紹介します。

「このインタビューの話が来た時に、もちろん嬉しいけど、僕でいいのかな?って思いました。だって今まで出てきた人はみんな、すごいおもしろいですよね。いろんなこと考えてるし。僕は、本当にふつうなんです……」

とりあえずお話を始めていただくと、のっけからの「離島出身で…」で思わず前のめり。美しい島の写真もお楽しみください。[text: 西岡妙子]

おじいちゃんになったら島に帰るのが夢

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大学の理工学部の四年生で、管理工学を専攻しています。さまざまな技術を統合し、システム全体の設計やコントロール方法の研究、新たな管理技法などを研究する学科です。

大学受験では、第一志望の学校に落ちてしまい、現在通っている大学の理工学部と他大の経済学部に合格しました。実は、その時が前ちゃん(編集部注:前田恵一・前田塾塾長)との出会いで、母がもともと前ちゃんと知り合いだったため、学校選びでアドバイスをもらったんです。そして、経済はある程度自分で勉強できるが、理工系の学問は中々独学だと難しいと思い、理工学部に進学しました。

専攻を決めたのは2年次。大学院に進むつもりはなかったので、専門的なことよりは実用的なことを学びたいと考え、数学がもともと好きだったのと、経済学や心理学なども含めた科目を幅広く学べるこの学科を専攻しました。

今の大学は、内部進学の裕福な家庭育ちや、東京生まれ東京育ち、地方出身、帰国子女、いろんな人がいるのが魅力。僕は、甑島(こしきしま)という鹿児島の離島出身です。小さなコミュニティで育ったので、特にそう思うのかもしれません。

大学以外では、鹿児島の高校の先輩で、トップキャリアコース講師でもある衆議院議員の宮路拓馬さんの事務所で、インターンとして秘書の方のお手伝いをしています。来年4月からは農林水産省に入省が内定しており、宮路さんから「国家公務員になるなら、政治家の世界を見ておいた方がいい」とお誘いをいただきました。政治の現場を見て本当に勉強になるし、自分なりの考えが持てるようになりました。

今話題の「桜を見る会」問題について、もちろん問題はあるとは思いますが、他にももっと議論すべき重要な問題があるのに……と感じています。具体的な例で言えば、GSOMIAについて韓国が破棄を撤回し延長を表明した件について、また、社会保障に関する議論など国民に影響の大きい問題についてももっと議論を深めるべきだと、僕は思います。

国家公務員を志したのは、3年生で就活が始まったとき。甑島は、過疎化、少子高齢化が進み、だんだんとさびれてきています。島の産業は、漁業を中心とした第一次産業。これで、故郷を盛り上げていきたい。僕がおじいちゃんになって、仕事も引退したら、島に帰って孫と老後を過ごすことが夢なんです。

同じ問題を抱えている自治体は、甑島だけでなく、日本中にあります。地方振興に寄与するためには、民間企業よりも公、国で働いた方が、現実的に支援ができるし、やりがいもあるだろうと考えました。

もう一つ、海外含めいろんな場所で働いてみたいという思いもあり、国家公務員であれば、日本国内外、いろんなところに住めると思いました。英語をもっと勉強して、使えるようになりたいです。

公務員試験に合格し、面接の後、官庁訪問といって、実際に複数の省庁を体験し、説明を受ける機会があります。そのときに、農林水産省の職員の方々の雰囲気が、自分に合っていると思いました。また、食に関する仕事なので、ずっとなくならないだろうと(笑)。

技術の進歩は目覚ましく、つい最近もGoogle量子コンピュータが話題になりましたよね。秋合宿でも、前ちゃんがその話をしていましたが、今までの常識はどんどん塗り替えられています。

「スマート農業・漁業」という言葉も生まれ、第一次産業にも自動化・効率化が進み、過疎地域に使える技術開発がどんどん進んでいます。農水省の方々が、「農業はこれからだ」「農業の未来は明るい」とおっしゃっていたことが、すごく印象的でした。

でも、目下の課題は卒論です……(笑)。 プログラミングがあまりわかっておらず(笑)、なかなか卒論が進まななくて、教授に怒られています。年内にはなんとか、目途を付けたいと思っています。


みんなの話を聞いてまとめる調整型のキャプテン

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芦浜。小さい頃はよく兄弟、友達と泳いだり、釣りをしたり、潜って貝をとったりもしていました。

僕が生まれ育った下甑島は、本土の串木野新港からフェリーで2時間くらいのところです。薩摩川内市に属する甑島列島の一部です。下甑島の人口は、2000人くらい。島には高校がないので、高校入学から鹿児島市内で兄と二人暮らしをしていました。

僕の通っていた小学校は6学年で50人くらい、3学年で20人くらい。僕の学年は人数が多くて、同級生は10人です。下甑の小中学校も統廃合がすすみ、いずれは1校ずつになってしまうかもしれません。

島内には電車はないのですが、バスは結構あります。おじいちゃん・おばあちゃんが多いので、バスは必要なんです。街灯が少ないので、星がすごくきれいに見えるんですよ。水産業が産業の中心で、魚が本当においしいです。

島に訪れる機会があったら、母がホテル「こしきしま親和館」のおかみをやっていますので、皆さんよかったらご利用ください(笑)。母がもともと前ちゃんと知り合いなので、前田塾のことを話していただけるときっと喜びます!!

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長浜。実家からの景色

子ども時代は、いつも外で遊んでいましたね。兄や弟、それから友人と。室内で過ごすときはゲームか漫画。「スラムダンク」とか「金色のガッシュ!!」など、王道の少年漫画が好きでした。今は「キングダム」がダントツでおもしろいです。

中学校には部活がバレー部しかなくて、そこから中・高とバレー部でした。キャプテンも務めましたが、僕はぐいぐい引っ張るリーダーというよりは、調整型です。みんなの意見を聞いて、まとめていく役回りでした。

大学に入ってからもバレーサークルで、結構一生懸命やりました。今でも、リフレッシュしたいときは、サークルに遊びに行って体を動かしています。

大学時代には、先輩にポーカーバーに連れて行ってもらったのがきっかけで一時期ポーカーにもはまっていました。参加費を払ってトーナメントに参加する、健康的なポーカーです。(笑)相手と向かい合う時の緊張感、観察して予測して、確率の計算をして……一度に感覚や思考、いろんな神経を使います。YouTubeで研究もしていました

(笑)

中学の時に、アメリカの西海岸に一か月ほどホームステイをしたことがあります。西海岸の過ごしやすい気候と、アメリカの大地の広大さに惹かれました。島は山と海に囲まれているので(笑)。海外勤務をしてみたいという気持ちは、このころの体験から来ているのだと思います。

母が働いていたこともあって、子ども時代はおばあちゃんが家のことをやってくれていました。毎日とても幸せそうだった島生まれのおばあちゃんが、ぼくの将来イメージです。30歳くらいまでに結婚して、子どもを何人か育てて、いずれは島に帰りたいですね。


勉強は一人でするものだと思っていたけれど

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母の紹介で前ちゃんと大学入学前に会っていたので、前田塾の存在は知っていましたが、なかなか予定が合わなくて。就職が決まってから、宮路さんの勧めで秋合宿に参加しました。

就職を前に、経営素養を身につけたい、Excelの作業効率を上げたい、また、優秀な人と会い刺激を受けたいと思っていました。

合宿では、大量の内容を一気に学びます。そうすると、自分のペースでは全然追い付かないから、分かってる人に聞くようになるし、分からない人に教えるようになる。「他者に分かりやすく説明できて初めて分かったということだ」と前ちゃんに前ちゃんに言われたのですが、説明できないと、いかに自分がフワフワな理解しかしていないかということに気付かされました。また、新しいことをインプットするときに、「他者に伝える」ということを意識しながら学ぶようになりました。

元々僕は、勉強は一人でやるのが好きでした。自分で調べ、自分で考えた方が、定着するし、長く身に付くと考え、分からないことも先生に質問せず、自分で考えることにこだわっていました。その方法に囚われていたと思います。でもそれだと、量はこなせない。

みんなで一つの課題に取り組むというのは、今までになかった新鮮な体験でした。

インプット量が多い人や、そういう仕事に就きたい人、またかつての僕のように独学独習でずっとやってきた人に、この体験をお勧めしたいです。

前ちゃんは、学びに対して貪欲という印象です。例えば、講義中に出た質問について説明している途中で、前ちゃん自身が気にかかるポイントがあったら、急に黙って考え込んでいました。かっこつけたり取り繕うことなく、考え込む姿が印象的でした。

それから、とにかく元気な人、という印象です。(笑)エネルギッシュですよね。僕らも影響を受けて、秋合宿のメンバーでさっそく新年会をやることになっています。

前田塾は、素直に「分からない」といえる人、そうなりたい人に合っていると思います。あと、人と話すの好きな人。

僕自身は、トップキャリアコースに参加してみたいと思っています。

合宿には、行動力が半端ない人がたくさん来ていて、参加者の方もいろんな世界を見せてくれました。そんな方々の話を聞いて、僕はずっと日本にいて、世界が狭かったなと、仲間からも刺激を受けました。

これから仕事を始めるにあたり、広いところを見ていきたいと思っています。

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島の様子のお話のときに、中野さんは、高齢者のことを「お年寄り」でも「ご老人」でもなく、ごく自然に「おじいちゃん、おばあちゃん」と表現されました。ご自身のお母さんのことは「母」と語るのに。

心の奥に、たくさんのおじいちゃん・おばあちゃんの顔があるのでしょう。穏やかで温かい島の様子が眼に浮かぶようです。「狭いコミュニティで育った」と中野さんは言います。でもそれは、多世代に渡る豊かなコミュニティ。

日本各地にある誰かの美しいふるさとを守るために、「これからです」とはにかむ中野さんの新しい物語が、胎動を始めました。

「社会の変化の中で、私たちは何を得たいのか、失いたくないのか、未来に何を残したいのか……そして、そのために何ができるのか」

改めてそう問われたようなインタビューでした。